摂食・嚥下障害の方の食事介助の注意点


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摂食・嚥下障害の方の食事介助の注意点
生きていくうえでとても重要な「食」。
人間は、空腹感を覚えたり、のどが渇いたり、食欲をそそられると、食べ物や飲み物を反射的に摂取したくなります。

その食べ物を歯で噛み砕いたりすりつぶしたりしながら、分泌された唾液と混ぜ合わせ、食塊にして(飲み込みやすい形にして)食道を通過させます。

反射も含むこの一連の流れを、摂食・嚥下(えんげ)といいます。

摂食・嚥下とは、単に食べて飲み込むといった動作だけではなく、食べ物を食べ物だと目で見て脳が認識し、嗅覚から味を想像する能力も含んでいます。

さらにそれを口に入れた後は歯でしっかりと咀嚼(そしゃく)し、正常な唾液の分泌とともに、噛んだ食べ物を食塊とし、タイミングよく舌根を動かし嚥下(えんげ)する。

健常者の身体能力に於いては、無意識の反射というべき動作です。

しかし高齢にて身体能力の低下が著しくなってくると、この反射・反応が、しっかりと行えなくなってくるのです。

例えば食べ物を見て食欲を引き起こすには、意識状態が鮮明でなければなりません。

それに、食べ物を見て「これは食べ物だ」と認識するには、視覚の良好な働きだけでなく、大脳皮質の働きも必要です。

ここに、脳梗塞や認知症、高次脳機能障害などが原因の病変が生じると、1つの認識不足から、誤嚥につながり、肺炎を引き起こすきっかけとなってしまうのです。

ここでは、摂食・嚥下(えんげ)障害の高齢者(被介護者)の食事介助の注意点を説明していきたいと思います。ヘルパーさんやご家族の方は参考にしてください。

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高齢者の摂食障害

若い女性がダイエットをきっかけに食べても吐いてしまうといった症状を引き起こすような、摂食障害と介護を必要とする高齢者の摂食障害は、少し類が違います。

どのように摂食困難になるかというと、原因に脳血管障害が挙げられます。


1.食べる為の運動機能の低下

障害によって、上肢・体幹・頚部の運動機能が低下し、食べ物を口まで運べない。


2.認知機能の低下

・視空間失認により、特定のものに集中してしまう(1つの皿でしか食べないなど)。
・食べ残しが多いなど、偏食になる。
・食べ物でないものを食べてしまう(異食)。
・満腹中枢の機能不全から1日何食も食べようとする。

といった、大まかな症状とともに、食事をする上で必要とされる筋肉や神経を司る中枢神経の機能不全が原因で咀嚼困難・飲み込み不十分・誤嚥が起こります。


高齢者の嚥下(えんげ)障害

摂食障害と嚥下障害は、2つでセットであるといえます。
1つの大きな原因の1つとして、脳卒中が挙げられます。

摂食・嚥下障害の原因疾患のやく40%が脳卒中であるといわれています。

また加齢に伴う症状でサルコペニア(筋肉減少症)といって、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)に必要な筋肉が失われてしまう状態が、今話題になっており、その予防が啓発されています。

他にも唾液の量の変化・嚥下反射の遅れ・咽頭の位置の降下・注意力、集中力の低下などが原因で、嚥下障害と判断されます。

昨今では「口から食べると誤嚥の可能性が高い」という理由から、安易に経管栄養の手術を行い、いわゆる胃ろうに頼った生活に転じる利用者さんが増えていますが、介助者(ヘルパー等)ができるだけのことをやって、最後まで口から食事を摂ってもらいたいものです。


摂食・嚥下障害の被介護者の食事介助の注意点

実際、摂食・嚥下障害の利用者さんに食事介助員として横に座ると、「絶対に誤嚥(ごえん)させてはいけない」と思って緊張しますね。

部屋食で2人きり。
こんなときムセたり詰めたりさせてしまったら・・・と考えただけで緊張で手元が狂いそうです。

まずこのような症状を持った利用者さん(被介護者)には、ミキサー食やペースト食といった飲み込みやすい食事を用意した上で、食事介助に当たりましょう。

在宅介護についてもそうです。
そして本来食事は楽しいものであるということを踏まえ、まず本人の様子をしっかり観察しましょう。食事の仕方・1回の飲水量・1口の大きさ・ペースなどなど、個性があります。

座位安定・姿勢の確認

ずれて座っていないか、両足はしっかりついているか、両手が出ているか、極度に背部が曲がっていないかなど。


口内の確認

異物が入っていないか、義歯がちゃんと入っているか。
渇きが目に見えて分るようであれば、お茶などで口内を潤してから食事を摂っていただきましょう。


自力摂取を促す

出来ないことだけを手助けし、自助具を使ってなるべく自力摂取を促しましょう。

本人のペースに合わせるということはフロアの時間に逆らうということでもありますので、施設ではいろいろあるとは思いますが、誤嚥の予防のためにも、ゆっくりと時間をかけて摂取していただくよう努めます。介助者は焦らないようにしましょう。


口に食べ物を運べない場合

全身機能が低下しており、食事介助が必要な場合、必ず飲み込んだことを確認してから次の1口をすすめましょう。

ペースト食であっても、食べ物がのどに止まって、飲み込むまでに時間がかかることがあります。「こっくん」と言ってもう一度飲み込んでいただく空嚥下も行いましょう。


飲み込みが悪い場合

舌の上に食べ物が乗るように声掛け、または介助をしましょう。頬にたまってしまい、飲み込めずにいたら、真ん中に食べ物を動かすよう声をかけます。

どんなに食べこぼしても、どんなに時間がかかっても、「自力摂取」には高齢者のQОLを下げさせない効果があります。

安全に、かつ楽しく食べていただけるように、雰囲気も大切にして、介助に当たりましょう。

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