ベッドから車椅子への正しい移動方法
ご利用者さま、ご家族の方をベッドから車椅子に移動するためのノウハウです。身体への負担を最小限に抑えお互いの安全を重視し車椅子へ移動するための手順をお伝えします。
ディメカニクスを活用し安全に楽に車椅子へ移動
少しでも動ける場合は、なるべく自力で移動してもらうのが1番ですが、どうしても動くのが危険な場合は、介護者が車椅子への移動を手助けします。
ベッドから車椅子に移動する場合、ベッドの端に足を下ろした状態で腰掛けてもらい、ボディメカニクスを活用し、安全に移動します。
ボディメカニクスを理解することで、身体全体の使い方や力の入れ方がわかります。
ここで言うボディメカニクスとは、人間の運動機能(骨格・神経・関節・筋肉)などの相互関係を活用した介護方法のことで、互いの労力や負担を最小限にすることを目的とします。
また、安全であり安楽な動きが可能になります。
移動を行う際は、腕時計やピアス・ネックレス・指輪など、被介護者を傷付ける恐れがありますし、介護者側も危険ですので外しましょう。
お互いの安全を重視し、身体への負担を最小限に抑える様、心掛けて行う必要があります。
移動を行う前に
2.排泄の有無を確認し、済ませてもらいます。
3.車椅子への移乗がしやすいように、ベッド付近を整理します。
注:物を動かす場合は、被介護者に動かすことを伝えます。(終了時、元通りに戻す)
4.車椅子の安全を確認します。(車椅子のタイヤの空気・ブレーキの効きを確認しておく)
5.ベッドの高さを調節します。(被介護者の足が床につく様にする)
6.ひざ掛けなどを用意します。(必要に応じ、クッションや円座も用意する)
車椅子の設置
ベッドの側面に設置します、この時、被介護者がアームレストにつかまり易く、尚且つ移動する距離を短くするため、ベッドの側面に対し20~30度の角度をつけます。片麻痺のある被介護者の場合は、麻痺の無い側に設置してあげます。
※車椅子のストッパーがかかっているか、フットレストは上がっているかの確認をします。
ベッドから車椅子への移動の手順
1.被介護者に、ベッドの端に足を下ろした状態で腰掛けてもらいます。
2.被介護者の臀部を手前に引き、身体を前にずらし、両足が床につく様に浅く腰掛けてもらいます。
3.車椅子を被介護者の方に引き寄せます。
※ストッパーとフットレストの確認を忘れずにします。
4.介護者の肩につかまってもらい、立ち上がってもらいます。
※この時、介護者は被介護者の足の間に片足(車椅子側ではない足)を入れます。
※介護者は被介護者の脇の下から腕を入れ、後ろに回し背後で腕を組みます。
※声掛けを行いながら、立つタイミングを合わせます。
5.被介護者が立ち上がったらバランスを崩さないようしっかり支え、被介護者の足の間に入れた足と逆の足を軸にし、ゆっくりと腰・足を回転させます。
※被介護者には、無理のない体勢で、足を動かしたもらいます。
6.車椅子と被介護者の間に隙間がないことを確認し、座ってもらいます。
※被介護者には、車椅子のアームレストをつかんでもらいます。
※介護者は、前屈みの姿勢になるよう、腰を低くして支えます。
7.フットレストを下げ、足をのせてあげます。
※フットレストを片方下げ足をのせ、また片方とやりましょう。
8.座った腰の位置を深くします。
※介護者は後ろに回り、脇の下から腕を入れ被介護者の前で腕を組み、被介護者を後ろに引きます
麻痺のある被介護者の場合は、麻痺側ではない手で肩をつかんでもらいます。麻痺のある被介護者は十分な力が入りませんので、介護者はその点を十分に理解し、自分が中心となって動かなければなりません。また被介護者には、麻痺側ではない手・足を上手く使って方向転換をしてもらいます。
声掛けを十分に行い、お互いの息を合わせ、安全に負担のない様手助けすることが大切です。
自分より体格が大きく、体重も重い被介護者の場合、スムーズに行かない場合があります。そんな時は、被介護者にベルトを付けるなど工夫をしましょう。また、無理だと感じた場合は、回りに協力してもらう様にしましょう。
車椅子への移動の注意点・観察事項
・車椅子の設置場所・角度は正しいかの確認をする。
・車椅子のストッパーがしっかりかかっているかを確認する。
・フットレストが上がっているかを確認する。
・介護者側は、軸足を上手く使いながら、身体を回転させます。(軸になる足を間違わないように)
・被介護者が少しでも動ける様であれば、無理に力を入れたりせず、本人の力を使います。
・移動中、被介護者が苦しくないかの確認を行います。
・立った時にめまいは無いか、足に震えは無いかなど、体調の変化を観察します。
車椅子移動は、被介護者だけではなく、介護者自身にも負担が大きい動きになります。腰だけの力で動かそうとすると、後々腰痛になったりしますので、身体全体を使いましょう。
膝を曲げ、腰を落とし、足の力も使う事で、腰への負担は軽減されます。
実際、介護者の中で腰痛持ちが多いと言われています。
被介護者の安全を考えるのは1番大切な事ですが、介護者側も負担の少ない安全な方法で行いましょう。