座った状態でのおむつ交換手順(男性・女性)
座った状態でのおむつ交換の手順について説明します。
座った状態ですのでここではリハビリパンツを使用している方の介助を想定します。
1.声を掛け、必要なものを準備
まず本人に介助することを説明し同意を得ます。
次に必要物品の準備をしましょう。
使い捨て手袋、使い捨てエプロン、新しいリハビリパンツ(紙パンツ)、ビニール袋、汚染している場合は新しい衣類、以上になります。
必要物品を持ち運ぶ際は中身が見えないタイプの袋に入れて運ぶようにしましょう。
交換後の汚物を運ぶ時に見えないようにするよう介助される側の方への配慮のためです。
※泡石鹸やお湯等も排泄後に洗浄する際には効果的ですし、皮膚トラブルの発生抑止には重要ですがここでは紹介しません。座った状態では適切に洗浄することが難しい為です。ベッドに臥床(がしょう:横になる)してから行う方が望ましいです。
2.尿とりパッドと必要ならリハビリパンツを交換
トイレに座っている場合を例に取ります。
座っているのでズボンやリハビリパンツは下ろしてあるものとします。
尿とりパッドのみ汚れている場合は立ち上がる際に新しいものと入れ替えるだけですが、リハビリパンツまで交換しなければいけない場合もあると思います。
その際は手すりや介助バーが設置してある場合はそちらに掴まってもらうよう声をかけます。しっかり掴まっているのを確認したら自分はエプロン、手袋を着用します。
今回の介助は利用者様の真正面にしゃがむ形での作業になりますので利用者様の羞恥心にも十分配慮しなければいけません。
声掛けと同意は必ず取るようにします。
人が自分の股の前にいるというのは恥ずかしいですし、できれば避けたいですものね。
次に片足ずつリハビリパンツとズボンを脱がせます。
この時床に着いている足は片足のみになりますので介助されている方は介助者が思っている以上に重心が不安定な状態になりますので安心できるような声掛けと、ゆっくり作業するよう心がけます。
リハビリパンツによっては両脇が切り離しやすくなっているものがあります。
こちらならわざわざ足を上げてもらう必要もありませんし、両脇を裂くだけですので交換自体もスムーズに行えると思います。
使用済みの尿とりパッドを回収したら尿量の確認をさり気なく行い速やかに用意していたビニール袋に入れて密封します。
排泄状況の確認の着目点としては尿量、尿の色、出血の有無、皮膚状態の確認です。
特に皮膚状態の異常は最も多い問題ではないでしょうか。
トイレを使用するということは寝たきりではないということですし、寝たきりの方に比べても栄養状態が良い場合がほとんどですがやはり高齢になると皮膚トラブルは起きやすくなります。
かぶれが発生すると痒みも出てきますし、それによって患部を掻いて更に症状が悪化する、という悪循環に繋がります。
ですので皮膚に異常が見られる場合はこまめに陰部洗浄したり、濡れた尿とりパッドは速やかに交換する等の対応が必要になってきます。
ちなみに泡石鹸等を使用した陰部洗浄は座った状態では適切に行うのが難しい為、今回のような場合トイレのウォシュレットで洗浄できるところまで行い、あとはベッドに臥床(がしょう:横になる)していただいてからそちらで行う方が適切です。
リハビリパンツの交換が必要な場合はここで新しいものを着用していただきます。
新しいリハビリパンツを履く手順はズボンを脱ぐ時の手順の逆で行います。
※座位が安定しているのを確認する→片足ずつ足を通す→ズボンも同様に方足ずつ足を通す。といった感じです。(これから排泄なので上までは上げません)
3.一旦退室。トイレ終了後に呼んでもらう
ここまで済みましたらトイレが終了したら呼んでもらえるように説明し一旦退室します。
もしも座位保持が不安定だったり、急に立ち上がってしまう方の場合は付き添うようにします。
4.排泄が終了後は尿とりバッドを
排泄が終了したと呼び出しがありましたら訪室し、新しく使用する尿とりパッドを準備します。
自力で陰部を拭き取れない方の場合はここでトイレットペーパーも用意します。
その後、介助バー等に掴まって一度立ち上がってもらうよう声をかけます。
立ち上がり時には目眩やふらつきが起きやすいので注意しましょう。
立位が安定しているのを確認してから便器の中の排泄状況を確認します。
自分で流してしまう方の場合は本人に状況を聞きましょう。
ここで多いのが血尿や痔です。
高齢者の場合無意識のうちに脱水状態になっている方が多く硬便の方も多く見られます。
他にも残尿感があったり、トイレの回数を減らすためにしっかり尿を出そうと無理にいきんでしまう、ということも非常に多いです。
その結果血尿や痔になってしまうのです。
また立ち上がった際は臀部(でんぶ:おしり)の皮膚状態を観察しやすいのでここでも素早く確認するようにします。
最後に新しい尿とりパッドを当て、リハビリパンツとズボンを上げて終了となります。
ズボンを上げる際には介助バーに掴まっていたとしても立位が不安定になりやすく、転倒のリスクが非常に高いです。
仮に転倒して骨折をしてしまえば今のようにトイレでの排泄が困難になり、臥床した状態でのオムツ交換で対応するようになります。
そうしますと廃用症候群が進み、ADLの低下は免れません。
高齢者の一度低下したADLを元に戻すのは非常に時間がかかりますし、元に戻る保証はありません。
介助される方には私達が思っている以上の力が加わりますので是非力加減には注意したいところです。
5.速やかに片付け異常があれば報告する
介助後は使用した物品や使用済みの尿とりパッドは用意していた中身の見えない袋に入れて速やかに片付けましょう。
片付けが終了しましたら先ほどの皮膚状態で異常があれば看護に報告しましょう。自宅等の場合は簡単なメモを取っておくといいでしょう。
そしてそれを元に皮膚科の受診をおすすめします。
以上が座った状態でのおむつ交換の手順になります。
留意点としては、排泄場所の安全環境を確認する、皮膚状態を観察する、排泄物に異常がないかを確認する、立位時には目眩や立位が安定しているかを確認する、です。
利用者の方が安心し、安全で双方が気持ちのよいサポートができるよう心がけながら介助を行うようにしましょう。