介護施設での身体拘束の注意点


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一口に身体拘束というと虐待を連想されるかも知れませんが、正しく使用すれば事故防止、被介護者の身の安全の確保に必要なものなのです。

ここではヘルパーが安全の為、やむを得ずに被介護者を身体拘束する際の注意点を説明します。

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身体拘束とは

介護施設において利用者が経管の管を抜かないように手袋のようなものをしたり、手を柵に結びつけたり、ベットや車椅子からから落ちないように固定したりと、利用者の体を抑制することを身体拘束と言います。

身体拘束になり得るものを説明していきます。


ミトン

認知症により痛覚が無くなったり正常な判断ができなくなってしまったりした場合に、皮膚を掻きむしり出血しているにもかかわらず掻き続けたり、経管栄養で胃瘻や経鼻管があることを理解できずに引っ張って抜いてしまったりするのを防ぐためにする手袋のようなものを言います。

通常は麻痺がなく動く方の手にするのが一般的ですが、麻痺が無い場合には両方の手にすることもあります。


抑制帯

これも同じ理由で行いますが、紐にマジックテープや固定する輪のようなものがありベット柵と利用者の手を結び固定することで患部や経管に手が届かないようにするものです。


安全ベルト

現在でも車椅子の利用者を車で送迎する際にシートベルト代わりに装着して車椅子から落ちてしまうことを防ぐために使用しています。

従来では車椅子上、椅子に座っている状態で認知症があり自身の下肢筋力が低下していて立ち上がりから歩行ができないのにもかかわらず、立ち上がって転倒を繰り返す、または転倒のリスクが非常に高い利用者に使用していました。

同じようなものに介護用テーブルというものもあり、車椅子に取り付けて車椅子上で食事を摂れるようにするものですが、テーブルがあることにより車椅子からの立ち上がりができなくなり、転倒防止の役目もあります。


抑制衣

認知症のためにおむつ外しや弄便行為のある利用者に着せるつなぎのような服のことで、上衣と下衣がつながっているためにつなぎ目がなくおむつに手が入らないようになっている衣類です。


精神安定剤

認知症や精神障害のある利用者に精神安定剤を服用させて落ち着かせることも身体拘束になるようです。


被介護者の身体拘束をしなければならない背景

介護施設では年々利用者の重度化が進み、介護保険制度がスタートした平成12年の頃に比べると寝たきりや認知症、あるいは問題行動が多い利用者が増えました。

一方対応する介護職員は離職が激しく介護職員のレベルどころか一定の人数さえも確保できていないのが現状です。

そのような中で同じ利用者の人数を扱うにしても職員の担う負担も年々重度化してきています。

また問題行動が多く配置されている職員の手では補うことができない場面も度々あります。

利用者は認知症があるために自分の身体の状態を理解できずに転倒を繰り返し、あるいは施設にいることを理解できずに無断外出を繰り返します。

また点滴や経管栄養、フォーレを理解できずに自己抜去を繰り返す利用者もいます。

一口に身体拘束というと虐待を連想されるかも知れませんが、正しい身体拘束は、事故防止、利用者の身の安全の確保に必要なものなのです。

表向き身体拘束は人としての尊厳を損なうものと定義されていますが、認知症を患い介護施設に預けられる状態の方の実際の状況、慢性的に人手不足や介護職員の質の低下が顕著な介護施設において事故をおこさないように、利用者の身の安全を確保するためにはむしろ必要なことであると言えます。


利用者の身体拘束は虐待か?

介護施設では従来より認知症疾患を患っている利用者が多いため、身体の保護あるいは事故防止のために身体拘束と呼ばれることを行って来ました。

近年では介護施設での老人虐待の事件が取り上げられた影響もあり、この身体拘束というものについて悪いものといったイメージが定着してしまいましたが、必ずしも虐待と言い切れるものではありません。

この虐待のあった介護施設では利用者を柱に縛り付けて身動きが取れない状態にしたり、鍵のある部屋に閉じ込めて長時間放置したりという状態がありました。

これを見ると必要な介護をしておらず、また放置という意味でもネグレクトという虐待に値するため明らかな虐待であると言わざるを得ません。

つまりは介護職員が楽をして放置するために行う拘束は虐待になりえますが、危険を理解することのできない利用者の安全を確保するため、あるいは配置された介護職員のみでは手の届かない、目の行き届かないところの補助としての身体拘束は虐待ではないのです


被介護者を身体拘束をする際の注意点

制度上では被介護者の状態が緊急、やむを得ない場合、もしくは生命に危険を及ぼす恐れがある場合、医師と家族の許可を得た上で記録を残すことが義務付けられています。

その利用者の状態をしっかりとアセスメントした上でリスクがあるという裏付けを取る必要がありますし、その理由をケアマネージャーや家族を含めて説明して納得してもらうことが大切です。

また身体拘束をしたからといって100%安全ということでもありません。

定期的に巡視、もしくは目の届くところに置いて他のリスクが少ない利用者よりも気に掛ける必要もあります。

しかしながら身体拘束が必要と思われる被介護者は一人だけではなく、複数存在します。

また必ずしも家族の同意が得られるわけでもないので、リスクが高い上に拘束ができないという状態の介護施設利用者もいます。

さらには通常ではリスクが高くない被介護者であってもいつ何時突発的に危険な行為をするか判りませんし、急変が起きるかもしれません。

そのような中でヘルパーは意識して日頃から利用者(被介護者)の状態を観察し、普段と少し様子が違ったり、自分の中でリスクの高い利用者を意識的に選別したりして把握すると共に、しっかりとした優先順位をつけておくことが大切になってきます。

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