リフト入浴の手順とコツ
高齢者の入浴に携わるに当たって、入浴のスタイルにも種類があります。
リフト入浴に関しては、立位を取ることは不可能だが、座位は保てる利用者様の残存機能を活かした入浴方法とされています。
ここではリフト入浴と手順のコツをお伝えします。
リフト入浴の手順
①バイタルチェック
リフト浴を利用する利用者様は、入院や膝・関節の炎症などで下肢筋力が1時的に弱っている、もしくはALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳梗塞による麻痺の進行により座位は安定しているものの、立位は取ることは不可能といった方たちです。
ですから普段からあまり活動が活発ではないため、入浴による血圧の変動・体調の変化には、十分注意し無ければなりません。
そのための基礎として欠かせないのがバイタルチェック。
そしてその利用者様の、日ごろからのバイタル数値の推移の周知です。
入浴前にバイタルチェックを行うのは常識ですが、リフト浴や機械浴の利用を必須とする利用者様に関しては、歩ける利用者様より病気からくる症状の変化が顕著であり、入浴に於いても急変が予想されます。
あらかじめ看護師に昨日の様子や、ここ最近の様子などを、入浴すること前提で確認するのもいいかもしれません。
ヘルパーは、バイタルチェックを行う際に、利用者様の顔色・表情・食事摂取量・気分不良等の有無の観察をしましょう。
これから一緒に入浴を行っていくわけですから、目線を合わせて世間話をしたり、コミニュケーションを蜜に取り、安心していただく。
そうすることで利用者様(被介護者)の緊張もほぐれ、事故の減少に繋がることもあるのです。
②リフトの準備
リフト入浴にも色々あります。
まだ吊り下げタイプの施設等多いですが、こちらでは個浴に対して、上下にアップダウンするタイプの支柱にシャワーチェアが固定された、比較的安定間のあるタイプのリフト入浴の手順とさせていただきます。
個浴や大浴場同様、浴室を温めます。
時間が無かったら利用者様の着替えやバスタオルを用意している間、熱めのシャワーを出しっぱなしにするのもいいでしょう。
浴槽にお湯を張ります。
利用者の好みの湯温も大切ですが、リフト浴使用での入浴を主とする利用者様の場合は、42℃以上のお湯での入浴はなるべくやめておきましょう。
浴槽にお湯を溜めると同時にシャワーチェアをしっかり温めておきましょう。
ずり落ちが普段から心配される利用者様の場合は、シャワーチェアにタオルをひかずにおきましょう。
③脱衣所の準備
脱衣所の温度調節をておきましょう。
入浴後、脱衣所との室温の急激な変化は、利用者様にとって大変危険です。
介助者(ヘルパー)が「すこし暑い」と思う室温でちょうどいいのです。
季節によって調節しましょう。
④入浴前の観察
バイタルOK・変調なしであれば入浴を行います。
脱衣の介助をする際に
・関節の痛みの有無
・皮膚の観察(かき傷が無いか、湿疹や発赤が無いか、あざが無いかなど)
を確認しながら介助を行います。
要介助者は介護されることを「申し訳ない」と思っている人も多いです。
こちら(ヘルパー)から「痛くないですか?」とこちらから聞き、相手の気持ちを引き出しましょう。
また立位の取れない利用者様は足の爪に白癬(はくせん:皮膚感染症の一つ)が生じやすくなっています。
白癬があるという申し送りが無くとも、感染予防のため足の爪も入浴が始まる前にチェックしておくといいでしょう。
⑤洗髪・洗体
準備が整ったら入浴を開始します。
利用者様に、車椅子からシャワーチェアに移っていただきます。
介護職員(ヘルパー)は落ち着いて移乗介助に臨みましょう。
付属のベルトで体感を固定したら、しっかりと座っていることを確認し、シャワーを足先から順にかけていきます。
「熱くないですか?」と、利用者様にお伺いしましょう。
OKであれば足から順にシャワーをかけていきます。
体全体が温まったら洗髪していきます。
耳を自分でふさぐことの出来ない利用者様の場合は、介助者が片手で耳をふさぎ、左半分・右半分と、順にゆっくり洗い流します。頭皮に湿疹や痒みが無いか確認しましょう。
体を洗う際には汗の溜まりやすい部位に注意しましょう。
リフト浴の利用者様の入浴は長湯は禁物なので、介助者にも焦りが出ますが、皮膚トラブルを防ぐためにも
・両脇
・足先
・胸のした
・お腹のしわ
・関節の内側
・おむつやリハビリパンツが当たっているところ
は、必ず洗いましょう(こすりすぎ厳禁)。
⑥入浴
体をしっかり流し、気分不良等無ければ浴槽に入ります。
浴槽のお湯を足先にかけ、湯温の確認を行います。
ベルトがしっかり止まっているのを確認し、きつすぎたりしていないかもう一度見ましょう。
固定が目視できたらリフトの「入浴」ボタンを押します。
浴槽に背中を向けていたシャワーチェアが、180度回転し浴槽まで降りて行きます。
ここで利用者様の肩に優しく手を添えると、とても安心されます。
一旦空中に浮く状態になるので、利用者様の不安感を和らげてあげる事が大切です。
⑦退浴
「出浴」もしくは「あがる」のボタンであがります。
このときも肩に手を添えてあげましょう。
気分が悪くないか確認のため、声をかけましょう。
あがり湯も最初のシャワー同様足先からかけていきます。
かけ終わったらすぐにシャワーチェアの上で体を拭き、バスタオルをひいた車椅子に移乗させていただきます。
リフト入浴を必要とされる利用者様の病気や身体状況は様々ですが、しゃべられる利用者様であれば、リフト入浴であれどしっかりコミュニケーションを取りながら介助させていただくことは大切です。
利用者様の安全・安心を確認しながら、楽しい入浴を心がけましょう。