高血圧の利用者様の入浴介助の注意点
健康診断で1度も悪いところの見つからなかった方でも、65歳を過ぎた方であれば入浴には注意をはらわなければならないと言われています。
急激な室温の変化による血圧の上昇、心筋梗塞、ふらつきによる転倒・骨折、脱水症状、湯船に浸かっているときの心肺停止、死亡事故。
自宅・病院・施設等、あらゆる場所で入浴がきっかけの事故は年々増え続けています。
ここでは、高血圧の利用者様の入浴の注意点をお話します。
高齢者の血圧変動
加齢とともに、体の中の動脈が古いゴム管やビニール管と同じように硬くなり、もろくなっていきます(動脈硬化)。
加齢により硬化した血管。そこへ強い血圧が急に加わると、若年層の柔軟な血管のように収縮して対応するといった反応が出来ず、破裂したり詰まったりします。
これが脳内での出来事なら脳出血。大動脈破裂。脳梗塞となり、心臓での異常であれば心筋梗塞となり、後遺症が残ることになったり、最悪死に至る事も有り得るのです。
反対に血圧が急激に下がった場合は、動脈硬化で血管が細くなった部分では、血液が流れにくくなり、よどんで固まります。
これを血液凝固と言い、脳梗塞や心筋梗塞の要因となります。
高血圧の利用者様の場合、こういった激しい血圧変動に対して、血管が対応できないと考えてよいでしょう。
高齢者で、尚且つ高血圧を抱えた方の入浴が危ないのは、入浴前後で室温の変化から、血圧の急な変動が予想されるからです。
例えば、急に熱めのお風呂に入ると、血管が開き始めは血圧が下がっていきます。
しかし湯船のお湯が本人にとって熱すぎるものだったとしたら、逆に交感神経が刺激され、脈が速くなり・血圧も上がっていきます。
浴槽のお湯は、本人了承の上、ぬるめでのお湯でのものが1番いいでしょう。
一方、ぬるめのお湯では血管が拡張して血圧が下がっていきます。
深いタイプの浴槽に8割以上湯を張り入浴すると、心臓から心房性ナトリウム利尿ホルモンが出てきていっそう血管を拡げて行きぐんぐん血圧を下げていきます。
ましてや飲酒後の入浴は、死に至るケースも報告されています。
血圧が下がりすぎ、退浴する際、浴槽から立ち上がったときに頭部に十分な血流が届かずフラッとなるか、目の前が真っ暗になって転倒、骨折、そして脳梗塞を引き起こすケースも少なくはありません。
ヘルパーは利用者様の体調の変動と傾向を知る
このように多大なリスクを背負った、慢性的高血圧を患った高齢者の入浴。
危険を回避するには介助者(ヘルパー)の利用者分析と観察が必要不可欠です。
普段から血圧が高く、上は140を必ず越えていて、降圧剤の効果を待ってからの入浴をしているという利用者様の場合、
普段から高血圧の状態に体が慣れてしまっているため、急な血圧の降下がもたらす体へのダメージが、通常の利用者様方よりも大きいので、細心の注意と常に見守りが必要です。
羞恥心から浴槽に浸かったら「もういいよ」といって介助者を出したがる方もいらっしゃいますが、浴槽に浸かっているときの急変は昨今増えています。
血圧が高く尚且つ高齢という利用者様の場合は、注意が必要です。
必ず見守り必須としましょう。
また、介護者は数値だけを頼りにしてはいけません。
「110/65。脈拍も安定している。だから入れる」といった安直な考えでは、高血圧症をお持ちの高齢者の入浴は、安全に施行できるとはいえません。
顔色・表情・食欲・言葉数など、利用者様のいつもの様子と違っているところがあったなら、看護師に報告し、入浴を一旦中止しましょう。
数値は機械が出しています。
バッテリーの状態や基盤自体の状態によっては、正確な数値を検出できていない可能性もあります。
普段からしっかりコミニュケーションをとるなどして、利用者様の変化に気付ける環境を整えておきましょう。
室温の急激な変化は生死に関わる
高血圧症の方は基本短浴とされていますが、浴槽に入るとあるていど体は温まっています。
温まり血圧が下がっているところに急な室温の変化から体が冷えると、血管の急激な収縮から交感神経が亢進し、血圧上昇をきたし、脳出血などを引き起こす場合があります。
脱衣所は介護者(ヘルパー)が「すこし暑いかな」と思うくらいの室温でもちょうど良いでしょう。
上記のことから、室温の変化は体に多大な負担がかかっていることがよくわかります。
室温調整には敏感になりましょう。
また退浴後は必ず水分を摂っていただきましょう。
利用者(被介護者)を急がせない
入浴を午前で7人施行しなければならないという施設や通所介護施設はザラですが、特に高血圧症の高齢者へは急がせるということはしないほうがいいでしょう。
入浴後、あがってホッとする時間が大切なのです。
急かして交感神経を刺激させると先ほども申し上げたように脳出血などの原因にもなります。
介護者(ヘルパー)はどんなに急いでいても声のトーンや雰囲気づくりで利用者様を安心させてあげる必要があります。
そのためにはまず入浴に関する利用者様の身の回りの入念な準備が必要です。
利用者様が「ああ、気持ちよかった」と心から言える入浴介助をめざしましょう。