視覚障害者の移動介助の注意点
ここでは、視覚障害者の利用者さんの移動介助でヘルパーが注意しなくてはならないことを説明します。
まず、お年寄り(介護サービス利用者)が患う視覚障害の種類を挙げていきます。
視覚障害の種類
緑内障
緑内障とは目から入ってきた情報を脳に伝える視神経に障害が起きて視野が狭くなっていく病気で失明に至ることもあり得ます。
白内障
白内障とは水晶体と言われるレンズの役目をする部分が加齢とともに白く濁り、視力が低下する病気です。水晶体は透明になっていますが白内障では白く濁るため視界全体がかすむ、光をまぶしく感じる等の症状が引き起こされます。
加齢黄斑変性症
加齢黄斑変性症とは物を見る時に網膜という組織で光を刺激として受け取り、脳に信号を送るために視神経に伝達するのですが、網膜の中心部分に黄斑という組織があります。その黄斑が加齢にともないダメージを受けて変化することで視力が低下する病気です。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症とは糖尿病腎症、糖尿病神経症と並んで三大合併症言われるものの一つです。糖尿病が原因で網膜組織が障害を受けて視力が低下し、重度になると失明にも至る病気です。
ヘルパーが視覚障害者の移動介助で気を付けること
一般的に高齢者の利用者は聴力が悪いことが多く、理解に時間がかかったり、反応するまでが遅いという傾向があるために説明をする場合解り易い簡単な表現を選んでゆっくりと大きな声で話すのは基本ですが、視覚障害のある利用者の場合は目が見えないということから視覚から得られる情報がありません。
よく百聞は一見にしかずという言葉がありますが、目から得られる情報というのは私達が考えている以上に多く、そこで多少聴力が劣っていても補えていることがあったりします。そのため目が見える利用者以上に説明する言葉を多くしてより丁寧に説明する必要があります。
実際に視覚障害のある利用者が横になっているベットに行ってこれからどこかへ移動介助すると仮定して順を追って説明します。
まず声がけですが、通常目が見える利用者の場合実際の部屋の配置とヘルパーがどこに立っているのかを目で見て理解することができます。
また明るさ等の情報からだいたい今の時間感覚も把握できます。しかしながら視覚障害があるとこれらの情報が判りません。
声を掛けると共に手を握ったり肩に触れたりすることでヘルパーが自分のどちら側にいるのかということを知らせる必要があります。
またどこに移動するのか場所を説明する前に、今の時間を知らせることで時間感覚を理解してもらうことも必要です。
次に行先を伝えて移動介助の同意をもらい移動介助に移ります。通常歩行に付き添う場合利用者の少し後ろの横に立つのが基本ですが、視覚障害がある利用者さんの場合は利用者の前に立ち両手を引く形で介助する手引き歩行が有効です。
これは目が見えないために利用者が感じる何かにぶつかるかも知れないという不安や恐怖を和らげる効果があり、安心して歩いてもらうことができるからです。
次に目的の場所に着いた際、トイレでも椅子でも言葉でどこがどうなっているのかということを説明すると同時に、実際に視覚障害がある利用者の手を対象物に触れさせて場所との距離感を図らせる必要があります。
実際に触ることでヘルパーの言葉だけではなく自分で距離感や形を理解し安心して行動に移ることができるからです。