介護に必要なボディメカニクスの知識


PR

01-6111

ボディメカニクスとは

介護の仕事をする上で知っていなければならない知識と技術、それがボディメカニクスです。人間の運動機能である骨、関節、筋肉等の相互関係の総称で力学的相互関係を活用した技術のことを言います。

介護の実際は表面的に報道されている内容よりもずっと重労働な仕事で、1日に何回も自分では立つことのできないお年寄りをケガをさせないように移乗介助をする、トイレ誘導をする、オムツ交換をする、施設になるとこの作業を何十人にも行わなければなりません。

何も知らずに介護をしてしまっては、とても対応しきれない程の負荷がかかって介護の持病と言われる腰痛や腱鞘炎を患ってしまうばかりか、無理をして介護事故を誘発してしまう事態につながってしまいかねません。

自分の身体を守り、なおかつ利用者にとって安全な介護を提供するためにボディメカニクスは必要不可欠なものなのです。

スポンサードリンク

支持基底面積を広く

支持基底面積とは読んで字のごとく何かを持ったり支えたりする際に基礎となる底の面積のことです。

人は通常両足で立っています。この両足の足の裏と、開いた足の幅がその人の支持基底面積となります。これは広ければ広い程安定します。

例えば両足をそろえて立つよりも、広げて立つ方が安定し、また開いた状態で前後にずらした方がより安定します。つまり2本足よりも3本足、4本足の方がより安定するということになります。


重心を低く

重心は高いよりも低い方が安定します。イメージとしては直立不動で立っている時に、他の人に押されると簡単によろめいてしまいますが、両足を開いて膝を曲げ、腰を低く構えた状態では同じように押されてもそう簡単にはよろめきません。

上記した二つ「支持基底面積を広く」「重心を低く」は介護をする際の姿勢になります。これから利用者を持ち上げる際に介護者が不安定な姿勢では一緒によろめいてしまうリスクが伴います。

介護者(ヘルパー)に体を預けている利用者は介護者に倒れられたらなす術がありません。なるべく支持基底面積を広くとり重心を低くして、支持基底面面積の中に重心を保つことができると安定した状態で介助をすることができるのです。


対象物(利用者)は近くに

安定した姿勢を作ったところで次は実際に利用者を動かす動作に入ります。利用者を動かす際に利用者を自分の方に引き寄せてから、あるいは自分が利用者に近付いてから動かしましょう。

これは対象物に近付いた方が小さな力で持ち上げることができるという理論に基づくものです。例えるならビール瓶が入っているケースを思い浮かべてみて下さい。ビール瓶が12本入っているプラスチックのケースは結構な重さですよね?

それを持ち上げると無意識にお腹の上に乗せる様にして持っていませんか?それが対象物を体に近付けると小さな力で持ち上げることができるということなのです。これを体から離して手を伸ばした状態で行うと持ち上げることができません。


対象物(利用者)を小さくまとめる

対象物は大きいよりも小さい物の方が運びやすいです。形を変えることができる物ならば運ぶ前になるべく小さくまとめることで動かす負担を減らすことができます。

例えば大きなシーツを広げたまま動かすのはとても大変ですが、小さくたたんでしまえば片手で持って運ぶことができます。

これと同じ理屈で利用者である高齢者も手足を伸ばして寝ている状態で動かすのではなく、手は胸の前で組ませるか健側の手で患側の手を持ってもらい、足は膝を立てて可能なら健側の足で患側の足を乗せる形で組んでもらうことで利用者の体型がコンパクトになり動かさす動作、起き上がり動作、移乗動作の負担を減らして安全に介助することができます。


水平移動

ベット上で利用者を移動する際、例えばベットをギャッジアップするのでベット中央部にいる利用者を少し上に動かしたい時や、ストレッチャーに移すのでストレッチャー側に近づけたい時等がありますが、この時利用者を一端持ち上げて動かすのではなくて、シーツ上を滑らせるように動かす(水平移動)と利用者を持ち上げる必要が無くなり楽に移動することができます。

ここでも対象物を小さくする、つまり利用者の体を小さくまとめてシーツと利用者の体の接地面積を少なくすると摩擦抵抗が減ってより楽に動かすことができます。


てこの原理

動かそうとする物体に対してそのまま動かそうとすると大変な力を必要とする場合にその物体に対して支点、力点、作用点というポイントを正しく作ると支点を固定させて力点に力を伝えることで小さな力で作用点を動かすことができるというのがてこの原理です。

このてこの原理を応用させると重くてとても起こすことができない利用者を小さな力で簡単に起き上がらせることが可能になります。


大きな筋肉を使う

利用者を起こす、動かす、移乗する、持ち上げるといった介護をする際に介護者(ヘルパー)は自らの筋力を使って力を発揮します。人間の体は大小多数の筋肉の構成から成り立っていますが大きな筋肉を使うほど大きな力を発揮することができるのです。

介護で力を入れる際には大胸筋、腹筋、背筋、大殿筋、大腿四頭筋等の大きな筋肉を使うことでより強い力を発揮することができて介護者の体への負担は少なくなります。

これらのボディメカニクスを正しく理解して介助にあたることで、介護する側の負担を減らして利用者にとっても安全で安心できる介護を提供することができます。

ヘルパーさんは、ぜひボディメカニクスを活用して日々の介護にあたって下さい。

スポンサードリンク

このページの先頭へ