胃ろうの利用者を介護する際の注意点


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胃ろうの利用者を介護する際の注意点

胃瘻(いろう)とは

高齢になると認知症のため食事を理解できなくなったり、咀嚼、嚥下機能が衰えてうまく食物を飲み込むことができなくなったりして、充分な栄養を摂ることが難しくなる状態の方が出てきます。

このような口から食事が摂れなくなったり、むせ込みが多なって誤嚥性肺炎を繰り返したりする方を対象にチューブで直接胃に栄養を入れる栄養投与の方法を取ります。

その際に内視鏡を使って腹部にチューブを繋ぐ穴を造るのですが、この穴のことを「胃瘻(いろう)」といいます。これは経管栄養と言われる栄養摂取方法で、胃瘻の他に経鼻経管栄養(鼻腔)、腸瘻を含めて3種類あります。

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胃ろうを造ることのメリット

食物を飲み込むことが困難になる嚥下障害があり、栄養を摂取出来なくなった状態でも胃瘻を造設して直接胃に栄養を送ることで、むせ込みや喉に詰まって呼吸困難になったり、肺に食物が入り誤嚥性肺炎になったりというリスクを回避した状態で安全で確実に栄養を摂取することができるようになります。

胃ろう(経管栄養)の介助をする際の注意点

※利用者の胃瘻(いろう)を含む経管栄養の対応は基本的には医療行為であり、看護師が行う業務になりますが近年では介護職員でも研修を受けることで行うことが可能になりました。


家族への説明・同意

胃ろうを造ることの有用性は上記で述べましたが、食事摂取が困難で栄養摂取が難しい状態であっても、人間本来の口から食事を摂ることができなくなること、胃に穴を開ける必要があることは、ご家族にとっては、にわかには受け入れがたいことでもあります。

ご家族の精神的ダメージや複雑な気持ちを汲み取り、医師からの指示であったとしても決して指示的な態度ではなく共感的な姿勢で、胃ろうを造ることの必要性やリスクもしっかりと説明した上で同意を取っておく必要があります。


使用する経管栄養物品の衛生管理

胃ろうでの経管栄養を実施する際にはイルリガートル、栄養点滴チューブ、カテーテルチップシリンジ、計量カップ等、複数の物品を使用します。

しかし経管栄養を実施するような利用者は一般的にADLの高い利用者に比べて免疫力や体力が低下している状態にあることが多く雑菌等に感染するリスクが高いため、使用物品の衛生に気を配り、物品の洗浄、消毒、交換等の管理を適切に行うことと使用前には対応職員は手洗いを徹底して、常に清潔な状態で使用することが大切です。


実施時の姿勢

基本的に経管栄養を注入時には上半身を30~45度に起こした姿勢である半座位(ファウラー位)にする必要があります。これは経管栄養の逆流を防ぐことが第一の目的ですが、その他に本人の意志とは関係なく経管栄養を外部から流し込むことになるので安定した姿勢を取りスムーズな栄養摂取、消化を促す必要もあります。

口腔ケア

胃ろうによる経管栄養を実施していると、口からの食事摂取をしていないため唾液の分泌による自浄作用が低下し細菌感染が起こりやすい状態になり、口腔内に繁殖した細菌による誤嚥性肺炎を誘発しやすくなってしまいます。口から食事を摂っていなくても1日3回の口腔清拭を行いましょう。


場合によっては身体拘束も検討する

胃ろうを造設する段階になると利用者自身は適切な判断ができずに寝たきりの状態になっていることが考えられます。この状態で気を付けなければならないことのひとつに胃ろうチューブの自己抜去が挙げられます。

利用者は胃瘻(いろう)というものを理解できずに、引っこ抜こうとすることがあります。胃ろうを抜いてしまうとすぐには直すことができず、医療機関での再挿入をしなければなりません。

また抜いてからすぐに対応をしないと穴が塞がってしまうため早急な対応が求められるだけでなく、胃や腹部を傷つけてしまうリスクもあります。利用者の状態によってはこれらのリスクを避けるためにミトンを使用する等の身体拘束も必要になる場合もあります。

利用者の状態を見極めて、拘束が必要か拘束しなくても安全なのかを判断することも大切です。


経管栄養注入時の観察のポイント

★看護師に報告するケース
胃瘻部からチューブが抜け落ちそうになっている場合
チューブ挿入部からの注入液の漏れている場合
胃瘻部やその周辺から出血している場合
経管チューブ内がいつもの注入液の色と異なっている場合(茶褐色等)

★注入を中止するケース
利用者が嘔吐している場合
利用者が息苦しそう、苦痛表情を浮かべている場合
利用者の顔色が悪い場合
腹部膨満感がある場合
注入開始後にしゃっくりがあった場合
注入液が滴下しない場合

胃ろうによる経管栄養は一見簡単そうに見えますが、経管チューブで外部から栄養を体内に入れるという人為的な行為であって場合によっては命に関わるような危険や予期せぬトラブルが起こることも充分に考えられる行為です。

上記に挙げた注入時の観察のポイントをしっかりと把握した上で、注入時はいつも以上に利用者を観察して異変があればすぐに看護師に報告し、適切な対応をしましょう。

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