誤嚥した時の対処法「背部タッピングとハイムリック法」
誤嚥(ごえん)とは
人が食物を飲み込んだ際、口から咽喉を通り食道を経由して胃まで運ばれます。
咽喉から食道に入る際に、食道と気道という分岐点があり、そこで食物や飲み物は食道、酸素は気道に分けられます。
分岐点には喉頭蓋と言われるものがあり通常は食物が気道に入らないような構造になっているのですが、それが誤って気道に入ってしまうことを誤嚥と言います。
高齢者に誤嚥が多い理由
高齢になると食物を噛み砕く力である咀嚼機能と噛み砕いたものを飲み込む力の嚥下機能(えんげきのう)が低下します。
また誤って食物が食道に入った際に咳をすることにより誤嚥を防ぐのですが、高齢になるとこの咳をする力も弱くなります。
これらの理由から高齢者は誤嚥を引き起こすリスクが非常に高いのです。
誤嚥を予防して被介護者に安全に食事してもらうためには?
正しい食事時の姿勢
私達が食事をする際、無意識に前傾姿勢になっています。
これは重力によって食物が咽喉に流れ込むことを防ぎ、食物を自分の力で意識して嚥下するためです。
しかし介護される状態になると車椅子上にしても、ベット上にしても車椅子の背面や、ギャッジアップしたベットに仰け反るような体勢になることが多いです。
食事前には一度体勢を直し正しい姿勢で食事を摂りましょう。
適切な食事形態
高齢になると咀嚼(そしゃく)機能と嚥下機能の低下により、食物を飲み込む力が弱くなるために誤嚥を引き起こすことは説明しましたが、これらを補うための対処法として食事形態の変更があります。
利用者さんの状態に合わせて、水分にはトロミ剤でトロミをつけたり、食物を細かく切り刻んだ刻み食やミキサーをかけたミキサー食に変更することで誤嚥のリスクを軽減することができます。
利用者さん(被介護者)が誤嚥してしまった時の対処法
利用者さんが誤嚥してしまった時の介助者(ヘルパー等)ができる対処方法として有名なのが背部タッピング法とハイムリック法です。
背部タッピング法
利用者さんを前傾姿勢、あるいは側臥位(横向きに寝ている状態)にして背中を丸めた状態にして肩甲骨と肩甲骨の間の部分を叩きます。
人には本来誤嚥した際に咳こむことによって、誤って入った食物を吐き出す気道防御反射があるのですが、背中を手の平で叩き気道防御反射を促し、咳をさせることで気道に入った食物を吐き出させる方法です。
ポイントとしては慌てて強く叩いてしまいがちですが、手の平をすぼめて手の中心に空気を入れるイメージでタッピングすると叩く強さが適切になります。
ハイムリック法
介助者は誤嚥している利用者さんの背部に回り、自分の利き腕を軽く握った状態で利用者さんのみぞおちより少し下の部分に押し当てます。
もう一方の手は握りこぶしの上に被せます。
そこから利用者さんを抱きしめるようにしてみぞおちに当てた握りこぶしを自分の方に引き寄せて利用者さんの胃を圧迫し異物を吐き出させます。