入浴を拒否する利用者さんの対処法
入浴は食事、排泄、と共に生活するうえで必要なものです。
施設では一般的に週に2回の頻度で入浴します。
本来であれば毎日入浴するのが望ましいのですが、施設の入所人数や介助するための時間的限度という理由と、利用者さんの体力的な問題という理由から週に2回程度の頻度ということになっています。
入浴は清潔を保つだけでなく、血行促進等による疲れを取り身体状態を回復させる効果や褥瘡をはじめとする皮膚疾患の予防効果、さらにはリラックスすることによる精神安定効果もあります。
本来であれば入浴を嫌う人はほとんどいませんが、施設に入所されている利用者さんの中には入浴を拒否される方やトイレを拒否される被介護者が度々いらっしゃいます。
これは施設サービスだけでなくショートステイやデイサービス、訪問入浴といった在宅サービスでも例外ではありません。
ここではなぜ入浴を拒否される利用者が多いのかということを考え、対処法を紹介していきます。
被介護者が入浴を拒否する理由
入浴拒否の理由「羞恥心」
一番に考えられるのは恥ずかしさという原因です。
入浴はと排泄と並び非常にプライベートなものです。
全裸になるのですから当然と言えば当然なのですが、介護を必要とする状態になりますと介助者(ヘルパー等)の手を借りることになります。
自分の全裸の状態を他人に見せることになりますから、やはり羞恥心が伴います。
他人に介助される状態に慣れていない場合や、羞恥心が強い性格の方はなおさら入浴を拒否する原因になります。
入浴拒否の理由「入浴時間」
入浴する時間を考えていきます。
私達は通常いつ入浴しますか?普通に考えると夕食後や就寝前に入るのが一般的です。
しかし介護を必要とする状態になると、介助者の手を借りる都合上どうしても日中に入浴することが多くなります。
また施設に関しては一日に何人も入浴させなければならないため、必然的に利用者さん一人あたりが入浴する時間が短い時間にならざるを得ません。
このような環境から利用者さんは「まだお風呂に入る時間ではないです。」「昼間に入ると風邪をひくから。」「ゆっくり入ることができない。」といった理由で入浴したがらない傾向にあります。
入浴拒否の理由「身体活動の減少」
高齢になってくると様々な身体状況の低下を実感します。
それによって身体活動も減少してきます。
人によっては判断が遅い、行動が遅い、動こうとしないといったことも背景にはこういった理由があります。
入浴をする際には服を脱ぐ、介助者と関わる、洗髪洗身をする、実際にお風呂に入る、身体を拭く、服を着るという行動をする必要がありますが、これらの行動をすることが、高齢の利用者にとっては身体活動の低下によっておっくうになる傾向が見られます。
したがって「面倒くさいから。」「迷惑を掛けるから。」という理由で入浴を拒否しますがこの場合は入浴自体が嫌なわけではありませんから、入ってしまえば非常に満足していたりします。
入浴拒否の理由「認知症」
認知症にも程度の差によって状態が様々ですが、認知症の初期段階の利用者さんや軽い状態の方、あるいは非常にプライドの高い性格の方によくある症状のひとつに、自分が認知症であることを理解できないといった利用者さんがいらっしゃいます。
具体的に説明すると、次に何をしようとしていたか分からなくなる、服を正しく着ることができないといように明らかに行動に不具合があり、自分一人では入浴ができない状態にあるにも関わらず、人に手伝ってもらうなんてもっての外、自分一人で入浴できると思っています。ですから介助者が携わる入浴に強く拒否を示します。
また重度の認知症の方では、介助者(ヘルパー等)がいくら丁寧に説明しても入浴することを理解できないといった方もいます。
このような状態の方は入浴することが理解できず、何をさせられるか解らないといった不安から恐怖を覚え激しく抵抗したりもします。
入浴拒否する被介護者の対処法
利用者さんとの信頼関係を築く
前述したように入浴は排泄と並び非常にプライベートな行為になります。
本来は自分一人で行う行為ということも踏まえ、介助者(ヘルパー)と利用者(被介護者)との関係が非常に大切です。
介助をする前の段階で利用者から信頼してもらえるような関係を作ることが必要になります。
まずは利用者によく知ってもらうこと、誰でも見ず知らずの方に自分の体を委ねることは不安になります。
利用者被介護者)との関わりの中でよく会話をして介助者のことを知ってもらうと共に、この方はどんな方なのか?どのような考えを持っているのか?と利用者さんのことをよく理解することが非常に大切です。
利用者のペースに合わせたり、解り易く丁寧に説明をしたりと、お互いに顔見知りのような状態になり信頼関係を築ければ利用者さんも安心して任せてくれるようになります。
認知症の方が入浴拒否する場合
認知症の方の場合は理解することが難しいですから、信頼を築いたように思っても、次の瞬間には忘れられてしまう等、関係を築くこと自体が難しいこともあります。
認知症はその時々の気分や感情が不安定でころころ変わります。
そのような場合には利用者さんの気分や感情に着目して、時を改めて声がけをすることが効果的です。
ある時は激しく抵抗しますがその時は無理をせず、時間を置いて声がけをすると意外とすんなり応じてくれることもあります。
また長期記憶は比較的保たれるという傾向を利用し、信頼している家族に頼まれたと話すことで納得することもあります。
また仲のいい利用者さんと一緒に入浴してもらうのも有効な対処方法です。