好き嫌いが激しい利用者の食事(被介護者)を作るコツ
日ごろお年寄り(被介護者)のお世話をしていて、お年寄りが楽しみにしているなと介護者側が感じるのは、1番には食事が挙げられるのではないでしょうか?
老人ホームなど施設であれば医師からの指示により栄養士・調理師が協力して献立を考え、バランスの良い、食欲をそそるような彩りある食事を提供しています。
在宅介護であれば最近では配食サービスが主流となって、お年寄りの安全で健やかな食生活をサポートし、お年寄りの食生活は昔より豊かになってきているように思えます。
ですが、在宅・施設、両方の高齢者からの意見としてよく耳にするのが、「食事に飽きた」との声です。
また介護者側からも、「最近○○さん、食べなくなった気がする」や、「最近、好き嫌いの多い利用者さんが増えてきた」といった、利用者の偏食や食事摂取量の減少を示唆する意見です。
ここで原因の1つとして、日本の戦後の飽食文化が挙げられます。
つい10年ほど前は、戦前・戦時中・戦前に青春時代を過ごした大正生まれ(大正は15年まで)の方々が被介護者として大人数を占めており、その世代は「贅沢は敵」「出されたものは残してはならない」という教育を小さい頃から守り続けていたため、食事は米粒1つ残さない方がほとんどでした。
しかし今の被介護者世代(昭和初期~20年)は、戦時中の食糧難に見舞われてはいたものの、そのときは幼少であったため、その後の戦後の高度経済成長に伴った飽食文化の影響も、少なからず受けている。
だから前の世代の方より、食事に関して少しルーズになってきていると言えます。
もちろん、この世代の方たちだって、出されたものは食べ残さないという気持ちは今の若者よりも強いはずです。
ですが、一緒に住んでいる嫁や息子が「別に無理して食べなくてもいい」「時間も決まってなくて良い。コンビニでいつでも手に入るし」という考えであれば、その被介護者も価値観が変わってきて当然。高齢者の好き嫌い・摂取量減少の有無には、時代も関係しているのです。
では、実際介護の現場で、どのようにすれば好き嫌いの多い利用者に、食事を楽しく摂ってもらうことが出来るのでしょうか
ここでは偏食、つまり好き嫌いの多さから食事を残しがちな利用者(被介護者)に対し、どのようなアプローチで調理に携わればよいかに焦点をあてていきたいと思います。
・野菜が嫌い
・魚が嫌い
・和え物が嫌い
・煮浸しが嫌い
・卵とじが嫌い
・汁物が嫌い
・甘辛いおかずが嫌い
・白米が嫌い・・・などなど、
筆者が経験してきた中でも、様々なこだわりを持つ利用者様がおられました。
上記の項目の中で3つ以上当てはまると、もう食事を作るのは困難になってきてしまいます。
なぜなら調理法が「茹でる・煮る・蒸す・とじる・和える・網で焼く」だからです。
利用者の健康のためにも、工夫して解決する必要があります。
野菜が嫌いな利用者(被介護者)の場合
野菜嫌いの人は、その色や形を発見しただけで食べなくなります。
しかし毎食、野菜は献立に必須。特に人参は、栄養価も高い上に年間通して価格が安定しており、献立に組みやすい食材であるため、よく出ます。
またヘルパーとして調理に当たるときも、使いやすい食材でしょう。
これを利用者が嫌いだと言って食べないとき、酢飯に混ぜて食べさせるという方法があります。
お年寄りはお寿司が好きな方が多い
他にも、ごぼう・しいたけ・小松菜・白菜・・・などなど、嫌いな野菜があれば、ちらし寿司に混ぜると食べてくれることが多いです。(おいなりさんでも成功したことがあります)
お年よりは唾液が出にくいので、酢飯だと食べやすくなります。
また多くの高齢者は寿司が大好き。
寿司の見栄えで、嫌いな食材の苦手意識をカバー出きるので、介護者(ヘルパー等)も「食べて。残さないで。」「また人参残してる。」と言わずに済みます。
歯ごたえがある野菜も残されがち
しろ菜・わけぎ・れんこん・白ねぎ・たまねぎといった、軽いボイルだと歯ごたえが残りやすい食べ物も、残されがち。
これにいたっては、食物繊維は残しながらも火を通し、歯ごたえを無くす方法、蒸す調理が効果的です。
1口大にし、ラップをして電子レンジで2分加熱すると、大分柔らかくなります。
葉野菜が嫌いな利用者(被介護者)には
葉野菜が嫌い。
例えばほうれん草・キャベツ・レタス・チンゲン菜ですが、これは緑色が配膳された小鉢に見えただけで食べてくれません。
色が目立たない例としては、お好み焼きに刻んで入れる。
おにぎりに、具として茹でて絞って刻んで入れる。その際もろみ味噌と合えれば緑色が見えにくくなります。卵焼きに入れているヘルパーさんもいて、成功していました。
食事の料理方法などにこだわりがある被介護者
煮物・焼き物・酢の物、色々な料理に関してこだわりの強い利用者も中にはいます。
野菜の切り方が違う。
魚は産地が分るものがいい。
酢のさじ加減が違うし種類も違うから美味しくない・・・などなど、様々な理由での摂取量の減少があります。
これは利用者に直接聞くか、聞けない場合は家族やよく面会に来る友人に教えを請うほかないでしょう。
後は利用者の出身地を調べ、味の好みや調味料の使い方を確かめたり、利用者(被介護者)の食べている様子を観察し、どのような料理の際、喜んでいたかをチェックしていくことが肝心です。
利用者の方々も、白内障で視力が低下しているため料理がおいしそうに見えなくなっていたり、上顎をふさぐ入れ歯のせいで、食べ物の風味が良く分らなくなっているなど、様々なストレスの中で食事を摂っています。
なぜ食べないのか。どんな料理が食べたい・もしくは食べやすいのか、チームで話し合う時間も大切です。