陰部の清拭方法・手順(男性・女性)
清拭の中でも、ヘルパーがもっとも注意を払わなければならない部位が陰部です。
陰部は、湿潤しているため細菌が繁殖しやすく、免疫力の低い被介護者は、感染症になりやすい部位です。
また、尿や便が排出されるところでもあるため、排泄物で汚染されやすく、不潔になりやすい部位でもあります。
陰部はデリケートな部位であるため、ヘルパーは、細心の注意を払い、被介護者の羞恥心を仰がない様に心掛けなければなりません。
そのため、被介護者への声掛けも最低限で済ませ、手早く清拭を行う事が大切です。
陰部は、男性と女性では構造が違い、清拭の手順も多少変わってきます。
介護者(ヘルパー・ご家族)は、陰部清拭の手順をしっかりと把握し、正しい清拭方法で行わなければなりません。
陰部清拭<準備する物>
・着替え用の下着(おむつなど)
・差し込み便器
・ぬるま湯の入ったボトル
・石鹸水の入ったボトル
・ゴム手袋
・ティッシュ
・防水シート(ビニールシート)
・フェイスタオル
・蒸しタオル
などです。
陰部清拭の前に
・室温を22度から26度に調節し、隙間風を防止します。
・ベッド付近を生理整頓し、安全に行える環境を整えます。
(掛け布団などは、一旦別の場所に移動しておきます)
・タオルケットやブランケットなど、上半身に掛けられるものを用意します。
・プライバシー保護に努めます。
仰臥位(ぎょうがい:あおむけ)の被介護者の臀部(でんぶ:しり)の下に防水シート(ビニールシート)、その上にフェイスタオルを1枚敷き、差し込み便座を置きます。
差し込み便座が無い場合は、尿とりパッドや紙おむつを代用して下さい。
陰部清拭の手順「男性の場合」
2.陰部にお湯をかけます。
3.陰茎を持ち石鹸水をかけ、包皮を下げて亀頭と包皮の中を洗います。
※力を加減し、尿道から外側に円を描くように優しく洗います。
※亀頭の周りのくぼみを良く洗います。
※陰嚢(いんのう:睾丸(精巣)を包む袋)の裏側も忘れずに洗います。
4.陰部・陰嚢をティッシュで軽く拭きます。
5.陰部・陰嚢にお湯をかけながら、石鹸水を良く洗い流します。
※包皮の中をしっかり洗い流します。
※陰嚢の裏側もしっかりと洗い流します。
6.陰部・陰嚢をティッシュで軽く叩く様に、しっかりと水分を拭き取ります。
陰部を拭くだけの場合、被介護者の陰茎を持ち包皮を下げて、亀頭と包皮の中を蒸しタオルなどで優しく拭きます。
特に亀頭の周りのくぼみと陰嚢の裏は汚れが溜まりやすいので、しっかりと拭きます。
最後に足の付根を拭きます。
注:物理的な刺激により勃起してしまう事がありますので、すばやく行いましょう。また、包皮を下げて清潔にしたら、包皮を元に戻す事を忘れない様にして下さい。
陰部清拭の手順「女性の場合」
2.陰部にお湯をかけます。
3.大陰唇を指で軽く開きながら石鹸水をかけ、丁寧に優しく洗います。
※外尿道口、膣口、小陰唇の内側→大陰唇→足の付根を肛門に向かって洗います。
4.陰部・周囲をティッシュで軽く拭きます。
5.大陰唇を指で軽く開きながらお湯をかけ、石鹸水を良く洗い流します。
※石鹸水が残っていると、炎症の原因になりますので、しっかりと洗い流します。
6.陰部・周囲をティッシュで軽く叩く様に、しっかりと水分を拭き取ります。
※大陰唇を開き、中心部から上から下に拭き、左右を上から下の順番で拭きます。
陰部を拭くだけの場合、タオルを数本用意し、箇所事にタオルを交換します。大陰唇を指で開き、膣口を上から下→小陰唇を上から下→大陰唇を上から下の順番でタオルをその都度交換しながら行います。
最後に足の付根を拭きます。
注:女性は男性よりも尿道が短く、外尿道口が膣や肛門に近いため、尿路感染症を起こしやすい事を頭に入れておきましょう。石鹸水の洗い流しに十分に注意して下さい。
肛門清拭の手順
2.肛門周りをティッシュで軽く拭きます。
3.肛門周りにお湯をかけ、石鹸水を洗い流します。
4.肛門周りをティッシュで軽く叩く様に、しっかりと水分を拭き取ります。
5.蒸しタオルで、臀部や腹部拭きます。
陰部の清拭の注意と観察点
・タオルなどの摩擦で陰部を傷付けない様に、力加減に気を付けます。
・洗う拭くの手順と方法(男性女性で違います)をしっかりと把握します。
・陰部の状態、色や臭いなどを良く観察します。
陰部は感染症などを起こしやすい部位ですので、異常がみられる場合は、専門医の診察を受けましょう。
陰部は、とてもデリケートな部位であり、心との繋がりも大きいと言われています。
陰部を清潔に保つ事で、被介護者の不快感を取り除き、感染症のリスクを軽減します。
陰部清拭は、こまめに行う事が大切ですので、介護者(ヘルパー・ご家族)は手順をしっかりと把握し、手早く行う工夫をしましょう。
また、被介護者の排泄の状態で、いつどんな時でも清拭が直ぐに行える様に、必要なもの(代用品など)を随時準備しておく事も必要です。