廃用症候群を予防する為にヘルパーができること
廃用症候群とは?高齢者が廃用症候群になってしまうと具体的にどうなる?廃用症候群を予防する為にヘルパーができることは何?
廃用症候群とは?
老化に伴い心身ともに衰えていく高齢者にとって、必要以上に安静にする状態を続けることは悪影響を及ぼします。立位が可能で頑張れば歩行できる状態であっても、転倒のリスクがあるからと車椅子を使用すると下肢筋力の低下が進み立てなくなってしまいます。
よくある例としてシルバーカーを使用して歩いていた方が体調を崩して入院し、退院するまでの間ベット上で過ごすと、退院する頃にはもうシルバーカーで歩くことができなくなってしまうばかりかベットからの起き上がりさえもできなくなることはなんら珍しいことではないのです。
高齢になると体力が低下し疲れやすくなることも事実ですが、だからといって寝てばかりいると筋肉の萎縮や拘縮の進行、さらには気分的な落ち込みからうつ症状までと、負の連鎖反応が起こってしまいます。つまり過度な安静は心身状態の廃退に導き、これを廃用症候群といいます。
廃用症候群になってしまうと?
では具体的にはどのようなことが起きるのか説明して行きましょう。歩ける人が車椅子を使用して立つ機会を失ってしまうと歩けなくなること、入院等で長期間ベット上で過ごすと起き上がりができなくなることは前述しました。
その他脳梗塞後遺症等で片麻痺である方が健側の上下肢も使用しないでいると筋力低下や関節拘縮により動く方の健側も不自由になってしまいます。また尿意、便意がありトイレに行く意思がある方が間に合わないためにオムツを使用すると尿意便意も無くなってしまいます。
食事では普通の食事が食べられる方が、噛むのが少し大変という理由で食事形態を柔らかいものばかりにしていくと、咀嚼機能や嚥下機能が低下して、普通の食事を噛んだり飲み込んだりできなくなってしまいます。
身体面の低下、廃用の説明を述べてきましたが、廃用は精神面にも影響があり、部屋に引きこもって寝てばかりいると、人との交流も少なくなるため気分が沈みがちになり認知症の進行を早める事にもなります。
廃用症候群を予防するには?
意欲的になってもらうこと
高齢になるとできないことが増えてきたり、同世代がの人が亡くなってだんだんと少なくなり孤独を感じたり、退職して仕事が無くなり、家庭でも子の世代に任せるようになると自分の役割も無くなる等喪失感が増えることから、精神的にも落ち込むことが多くなってきます。
心と体は密接な関係にあり気分が落ち込むと、活動量は減り自分に価値が見出せなくなり、下手をすると引きこもりになってしまうこともあります。
高齢になると風邪で少し寝込んだだけでも起き上がれなくなったり、立位が保てなくなることも起こり得ますから、消極的になって寝込んでしまっては寝たきりの廃用性症候群にまっしぐらです。前向きな考えを持ってもらうようにして心も体も意欲的な生活を送りましょう。
できることはご自身で行うという意識を持っていただく
近年介護予防の観点から自立支援という言葉を聞くことが増えてきました。自立支援とは介助をする際に、できるところは自分でしてもらうように促すことです。以前は介助とは障害者や体の不自由な高齢者に対して全てしてあげる事でした。
しかし、それが原因で数少ない自力でできることをもやがてできなくしてしまい、介護状態の重度化に滑車をかけてしまう結果となりました。ですから高齢になり例えできないことが増えてきても、残った機能を使って自力でできることは他者の手を借りずに自分で行うということも廃用性症候群にならないために、あるいは進行を抑制するために大切なことになります。
介助をする際には、利用者のできることとできないこととを正確に見極めて、多少時間が掛かったとしても自力で行うことができることは、励まして自力で行うように仕向ける、あるいはやる気を引き出すこともヘルパーとしての仕事になります。
身体を動かす機会を持つ
身体を動かすことは、心身の活動量を保ち筋力の維持向上を目的に行いますが、身体を動かすことで日頃のストレスを発散してリフレッシュするという目的もあります。これによって精神状態も健康な状態に保ち意欲的に生活することにつながります。
心と身体は密接な関係にありますので、精神状態を健康な状態に保つことで相対的に廃用性症候群を防ぐことができます。ヘルパーは精神的にふさぎ込みがちな高齢者に対して、レクリエーションや趣味等を活用して楽しく身体を動かす機会を作ってあげることも必要になります。
楽しみを持っていただく
身体を動かすところでも触れましたが、楽しみを持つことは意欲的に生活する上では不可欠な要素になります。身体を動かすことが趣味や楽しみに直結する高齢者もいますが中には身体を動かすことが得意ではない方や嫌悪感を示す方もいると思われます。
そのような方には身体を動かすことではなくても、楽しいと思えることに取り組んでもらうことで意欲を引き出すことも可能です。楽しみを持てば行動につながります。
例えば仲のいい友達との会話を楽しむために外出する等、このような小さなことでも高齢者の廃用性症候群を防ぐ第一歩となるので、介助に携わる際にその利用者はどのような方で何が好きなのか?という視点を常に持ちながら関わり楽しみを引き出してあげましょう。
廃用症候群の予防「まとめ」
既に寝たきりの方や、半身麻痺等で身体が不自由な利用者には「自立支援」を促す介助は、今やヘルパーにとっての常識になりつつありますが、廃用性症候群を防ぐ根本的なキーワードは毎日を意欲的に楽しみを持って生活してもらうことが大切です。
高齢になるにつれて役割が無くなっていく、同世代と死別していく、できないことが増えて行く等落ち込んだり、意気消沈してしまいがちな環境にあるからこそ、自分らしい楽しみを持ってもらうことが大切な第一歩となります。ヘルパーは高齢者がこの一歩を踏み出すお手伝いをするということが非常に大切な役割であると言えます。