高齢者虐待の種類
高齢者虐待のニュースをよく耳にしますが、虐待と一括りにしてしまうには、あまりにも様々な状況があります。
虐待は、身体的苦痛と精神的苦痛を与え、高齢者の人格をも破壊してしまう場合もあるのです。人は、暴力・言葉・態度など様々な状況で、他人に苦痛を与える事ができます。
様々な状況での虐待の種別を、簡単に説明します。
2.心理的虐待…言葉や行動による、ストレスや危害を加える事
3.経済的虐待…本人の許可無く、所有物や資産を搾取する事
4.性的虐待…同意なしでの性的な接触や力ずくでの性的接触の事
5.放棄放任(ネグレクト)…日常の必要な世話を怠る事
5に挙げた放棄放任(ネグレクト)については、介護者側が行う虐待とは別に、高齢者自身が行っている”セルフネグレクト”があります。
虐待よりも高頻度で見られるとも言われています。医学的な問題(アルツハイマー・うつ病・複数の慢性疾患etc)が無くとも、”セルフネグレクト”の状態になる場合があり、この場合の理由は解明されていません。
”セルフネグレクト”とは、介護者は関係なく、高齢者自身が必要な薬や食事を怠り、身の回りを清潔に保つ事をせず、その他の必要な活動・行動をしなくなる事です。
身体的虐待について
殴る・蹴る・縛る・打つ・揺さぶる・ぶつけるなど、挙げれば切りがない程に行為があります。
中には、病院や施設でも行っている”拘束する”も時と場合によっては虐待になりますし、食事を無理に食べさせるのも身体的虐待です。
身体のアザやロープの摩擦による火傷痕、引っ掻き傷や切り傷などが適切に処置されていない場合、身体的虐待を疑う必要があります。
心理的虐待について
高齢者に対し、ストレスや苦悩を引き起こさせる言葉や行動は心理的虐待の典型となります。言葉での脅迫や侮辱、厳しく命令するのも心理的虐待となります。
また、高齢者の言葉を無視したり、数日に渡り会話をしないのも虐待です。
心理的虐待を受けている高齢者の多くが、引きこもりがちになり無抵抗で、さらにうつ状態に陥るケースが殆どです。
経済的虐待について
言葉巧みに高齢者から金品を奪ったり、資産配分を強要したりする行為は虐待にあたります。また、高齢者の金銭を無責任に管理する事や、高齢者の交友関係などを制限するのも経済的虐待となります。
経済的虐待については、身内が介護者である場合が多く、巧妙な形があるため、他人が見抜くことが難しい場合もあります。
性的虐待について
高齢者は力が弱く、力ずくで抑え込まれる場合が殆どです。
性的虐待には、必ずしも傷痕が残るわけではなく、訴えがないと発覚しない事が多くあります。
しかし、少なからず胸や陰部にアザがあったり、腟または肛門からの原因不明の出血は性的虐待を示していると考えます。
放棄放任(ネグレクト)について
身の回りのことが自ら行えない高齢者への世話を怠る、もしくは全く行わない事を放棄放任(ネグレクト)と言います。
必要な薬や食事を与えなかったり、身の回りを不衛生にしていたり、必需品を故意に取り上げることも放棄放任(ネグレクト)です。
放棄放任(ネグレクト)に関しては、介護者自身が気付いていない場合や、最善を尽くしているにも関わらず、経済的な理由から放棄放任(ネグレクト)に陥るケースもあります。
虐待の程度で考える
虐待は虐待ですが、軽度から重度までの程度があります。程度分けして考えるのは如何なものかと思いますが、中には知識不足や経済的困難から引き起こされるケースもあります。この場合は、周りの助けがあれば改善できるケースが多いと言えます。専門知識を持った者が介入し、介護の方法を教えるだけ改善できる場合や、丸っきり専門の者に任せるかは程度により異なります。
しかし、専門の施設でも虐待は絶対にないとは言い切れないでしょう。介護する側の気持ち一つが問題だと言えます。
虐待を行う者に共通して言える事は、自分自身のストレスが溜まり、発散する場が無いと言う事です。周りに助けてくれる人も、愚痴を聞いてくれる人も居ない場合が多く、立場の弱い高齢者に当たるしかない状況だったりします。
高齢者は虐待を受けていたとしても、口を閉ざしてしまう事の方が多く、他者が気付くのが遅れ、深刻なケースになる事が多々あります。
また、虐待かどうかと言う判断は非常に難しく、虐待を未然に防ぐのは困難です。しかし、周りの者が少しの変化(介護者の言動や行動・高齢者の態度etc)に気付くことで、重度化する事は防げます。
虐待はどんな状況であれあってはならない事です。しかし、介護者としての知識と心構えがあっても、精神的な弱さから虐待を行ってしまう場合もあるのです。
もし、自分の身近に、介護を行っている人がいるのであれば、自分には関係の無い事だと知らん振りせずに、注意深く見守る事が高齢者虐待を無くす一つの手段だと言えるでしょう。