看取り介護の役割りと注意点
現代の日本では、自宅で最期の時を迎える方は1割程度と少ないのが現状です。殆どの場合が、自宅以外の施設等で亡くなっています。近年では老人ホームなどの介護施設を最後の場所として選ぶ方が増えています。
そのような現状の中に、『看取り介護』があります。看取り介護は、利用者さんやご家族の希望を事前に確認し、専門スタッフがその人らしい最後の瞬間をプロデュースします。決して”死の瞬間を見守るだけ”のものではありません。
看取り介護には、『その人らしい人生の実現』が大切になります。利用者さんが死期を迎える最後の最後まで”その人らしさ”に重点を置き支援していきます。そのためには、利用者さんの身体的苦痛・苦悩をできる限り緩和し、その方なりに充実して納得した最期を迎えられるように心を込めた援助を行っていきましょう。
看取り介護の役割とは?
看取り介護には、上記で述べたように”その人らしい最期”を迎えてもらうための支援をするといった役割があります。そのためには、1日1日を”その人らしく生きた証”として残してあげられるように介護することが前提と考えられます。
看取り介護では利用者さんの身体的苦痛を取り除くと共に、ご家族の方々の心的負担を少しでも和らげるようにフォローすることも大切です。
基本的なマニュアルはあるものの”その人らしさ”はそれぞれですので、マニュアル的な対応の中でも”その人らしさ”に目を向け続け、合わせた対応が重要なポイントになります。
しかし最期を迎える頃になると、利用者さん自身から「こうしたい」「こうしてくれ」と言葉に出すのは難しい場合が多々考えられます。ご家族や周囲の方などからの情報を集め、”その人らしさ”を把握する必要があります。どんな些細なことであっても、利用者さんらしいことは見逃さないことを心掛けることが大切です。
また、利用者さんご家族に対しての心配りも忘れてはいけません。看取り介護を希望された背景には、様々な考えや悩みがあったと考えられます。言葉一つかけるにしても、そのご家族の思いをくみ取ることが大切になります。ですが、どのご家族に対しても「一人で悩みを抱えず、いつでもご相談下さい。」「お手伝いさせて下さい。」という言葉を伝えることは重要なことです。
看取り介護では、利用者さんご本人の生き方を最期まで尊重すると共に、利用者さんご家族の心のケアをすることも重要な役割なのです。
看取り介護の注意点とは?
看取り介護というと、どうしても『死』を意識してしまいがちですが、特別な指示がない限りは普段通りの心のこもった接し方が利用者さんにとって良いのではないかと考えられます。何故なら、普段と違う接し方をする、もしくはされてしまうと、お互いに『死』を意識しまうからです。
『死』を意識することは悪いことではありませんがマイナスに捉えられがちですので、なるべくなら意識せずに接する方が良いでしょう。ただし、”その人らしさ”は個人個人で変わってきますので、接し方はその人に合わせる必要があります。
そして利用者さんご家族に対してのケアは心のケアが殆どですので、言葉の選び方は慎重に行わなければなりません。また『死に直面する』と人は無意識に表情が暗くなり、考えがまとまらず様々な迷いがでてくることがあります。不安や焦りなど悩みが大きくなり、心が揺れることも多々あります。
看取り介護を選んだご家族は、それが正しい選択なのか…などと悩むことが少なくないといいます。そのようなご家族の心のケアをする場合には、アドバイスの前に聞き役に回ってみましょう。
話を聞いたうえでご家族の”今の気持ち”を理解し、意思決定を急かすことなく対応していきましょう。今後、気持ちがまた変わったとしても、その都度話をよく聞き、合わせた対応をしていくことが大切です。
また、ご家族の意見には耳を貸し、最善の方法を考える必要があります。ご家族が利用者さんの医療方法についてや身体の影響について不安を抱いている場合は、担当の医師から説明をしてもらうことで不安が和らぐことがあります。専門のことに関しては担当者(医)の言葉が、ご家族にとっては大きな意味を持ちます。
特に在宅での看取り介護になると病院や施設などに比べると、在宅で行える医療行為が限られてきますので、より自然な形で死を迎える選択となることが考えられます。そのような状況の中では、医師からの説明は最も重要になります。