視覚障害者の利用者とのコミュニケーション方法
私たちは日常生活の中で、視覚と聴覚によって外界からの情報を得ています。その中でも、半分以上は視覚による情報といわれており、視覚に障害が起きると日常生活や社会生活に大きな支障をきたすことになります。
また、障害の発生時期により、生活する上での困難も異なってきます。一般的には障害が発生した時期が遅ければ遅いほど喪失感が大きく、精神的ケアが特に必要だと考えられています。
視覚障害者とのコミュニケーションツール
視覚障害者は文字によっての情報を得ることが難しく、それを補うのが点字です。しかし、点字については全ての視覚障害者が読める訳ではありません。
障害発生時期が遅い場合、点字の習得は難しく、特に中高年になってからの点字使用はとても困難です。実際に点字を使用している(できる)視覚障害者は5人に1人程度だといいます。
また、健常者が点字を習得することも同じく難しいと考えられます。
そこで1番のコミュニケーション手段として考えられるのが音声のやりとりです。しかし、視覚障害者との音声でのコミュニケーションには注意すべきポイントがあります。
音声でのコミュニケーションでの注意点
視覚障害者は視覚機能に代わって、聴覚や触覚からの情報がとても大切になります。
ですから、音声でのコミュニケーション時は音として情報を伝えたり、物に触れられるように配慮してあげましょう。
また、周りの状況も考え、騒音がある場所での会話はなるべく避ける方が良いでしょう。会話が聞き取れないだけではなく、視覚障害者の聴覚は私たちが考えているよりも敏感ですので、騒音が気になって会話に集中できない場合もあるかもしれません。
話し掛ける前には、驚かせないように声掛けを行いましょう。この時、言葉より先に体に触れるのはやめましょう。そして、声掛けを行ってから自分の居る位置を知らせてあげましょう。「隣に座りますね」などとはっきりとした場所を指定して伝えましょう。「ここに座りますね」などという表現では伝わりませんし、逆に気分を害してしまいます。
話をする際は相手の方に体もしくは顔を向け、声を届きやすくしましょう。
相手に体や顔を向けて話をするのは、通常の動作であり基本でもあります。視覚がないからといって疎かにして良いものではありません。
また、声には声色(こわね)というものがあり、これによって視覚障害者に感情を伝えることができます。そして、言葉自体には様々な表現法がありますので、相手が不快に感じる言葉は慎みましょう。
視覚から表情を察知できない視覚障害者にとって、声色や言葉使い(アクセント)は相手の表情を察するためにはとても重要なことでもありますので、十分な配慮が必要です。だからといって、わざとらしく声を変える必要はありません。重要なのは分かりやすい言葉を使い、声色で表情や感情を伝えることなのです。
1番注意して欲しいのは、話に夢中になりすぎて「あちら」「こちら」などのような不明瞭な言葉を使用してしまうことです。視覚障害者に対しては「右の方へ~」や「○歩ほど先に~」などといった具体的な表現を用いることが大切です。
特に、外出先などの慣れていない場所では具体的に説明し、安心感を与えてあげることも必要です。もし、その場を離れるようなことがあれば「○○に行ってきますね」などとしっかりと場所を伝えてから離れましょう。
コミュニケーション方法はその人その人で異なる
視覚障害者の場合、視覚の部分を他の機能が補おうとするため、コミュニケーションの取り方は言葉だけとは限りません。また、その人その人で優れている機能も異なっています。その人の持っている力を活用したコミュニケーション方法を取ることが最善の方法です。
聴覚以外にも触覚が優れている視覚障害者の場合、触覚を活用してコミュニケーションを取るのも良いでしょう。物に触れることで感じることも多々あります。例えば、春先になって「花がいっぱい咲き始めましたよ」と言葉で伝えるのも良いとは思いますが、花に触れることでより春の感じ方が変わるでしょうし、匂いを感じてもらうのも良いでしょう。
臭覚が異常に優れている人であれば匂いで何かを伝えたり、外の空気を吸うことで季節や天気などを感じることもできます。
私たちが視覚だけで感じているものでも、視覚障害者は様々な機能で物事を感じることができる素晴らしい力を持っています。それらを活用してコミュニケーションを取ることが大切だと考えられます。