被介護者の体位変換方法(上方移動)
寝たきりの方を上方に移動する体位変換方法(上方移動)を説明します。
寝たきりの方の食事介助をする際や経管栄養を開始する際、ベットの上半分を起こして介助をします。
これをギャッジアップと呼ぶのですが、ギャッジアップをした状態を維持していると重力により体が下方にずり下がることがあります。
また寝たきりの方がどちらか一方に麻痺がある場合、麻痺がある側に体が傾きます。
あるいは多動な方、認知症があり動く方の場合でも体が最初に整えた姿勢から食事介助を終えた際に大きく崩れていることがあります。
このような場合に必要なのが上方移動です。
上方移動しやすくする為に接地面積の縮小
上方に動かす際にも水平移動と同様にボディメカニクスが大切で、動かす前の準備段階として体と寝具との接地面積を縮小することが必要です。
腕は胸の前で組んでもらい、麻痺がある場合は健側の手で麻痺側の腕を支えてもらいます。自分の意志で掴めない場合は、両手を組み胸の上に置きます。
足は両膝を立てた状態にします。左右の体位変換方法で回転させる場合と同じ態勢です。頭は自分の体を見るように起こしてもらいます。
どこを支えると安全に、そして楽に上方移動できる?
体を支えるポイントですが、上方移動する場合は左右に移動する場合よりも大きな力が必要になるので、介助する側はより対象者に近付き、腰を落として、ベットサイドに両膝を接地させて、あるいは体の小さな方は利き足の膝をベットの上に着くとより介助をし易くなります。
ここから対象者の体の支え方に入ります。介助する側から見て対象者の右側(対象者の左半身側)から介助する場合、自分の右腕を対象者の左耳の位置から首の後ろを通り右脇まで入れます。
この状態から肘で対象者の頭を支え、手の平は対象者の右脇を抱えます。
次に左腕は対象者の左の足の付け根の位置から臀部を通り右腸骨部まで入れます。この状態から左腕全体で臀部を支え手の平は右腸骨部を抱えます。
上方移動する
上記の状態から実際に上方へ移動します。
介助する側(ヘルパー)は対象者を支えた両腕で、対象者の腰を中心として上半身と下半身を30°程度の角度まで前屈させます。
これにより対象者と寝具の接地面が腰の一部のみになり摩擦がほとんど無くなるので、この状態で対象者を上方へ移動します。
注意するポイント
上記したようにボディメカニクスを適切に使い、対象者の態勢を整え、介護する側(ヘルパー)も正しい態勢で介助することで最少の力で安全に対象者を上方移動させることができます。
しかし注意するポイントとして対象者である寝たきりの方は状態が多種多様であり麻痺、拘縮の部位、認知症による抵抗等も十二分に考慮して介助することを薦めます。