ヘルパー(介護職員)の腰痛予防法
腰痛はヘルパーの持病
介護の仕事に就いている方は腰痛に悩まされます。この腰痛と腱鞘炎は介護職員(ヘルパー)にとって職業病と言われ特に仕事に就いたばかりの方は業務上の勝手や介護技術のコツ等が分からないためついつい無理をして痛めてしまう可能性が高いのです。
お年寄りのお世話をすると一口に言っても、実際はかなりの重労働です。ヘルパーさんは正しい知識を身に付けて腰を痛めないように仕事に取り組みましょう。ここではヘルパー(介護職員)の腰痛予防法を説明します。
なぜヘルパーは腰痛になるのか?
介護の仕事はお年寄りのお世話をします。テレビ等では笑顔でお年寄りに語り掛けて、食事介助を手伝ったり、散歩にお付き合いしたりとわりと負担の少ない仕事として映るかも知れません。
しかし実際施設に入所しているお年寄りは自分で身の回りのことをすることができるのは全体の1割程度で、ほとんどの方は自分でベットから車椅子に移ることができないような状態です。
介護の仕事は専門学校を経て施設に入社して来る職員は思ったよりも少なくて、他業種からの転職や、ハローワークからの職業斡旋を経て入社して来る方が多く、入職前の介護の仕事のイメージと入社してからの仕事のイメージがかけ離れていること、人手不足から入社後充分な研修を受けることなく知識不足の状態で現場業務に配属されてしまう現状も腰痛になる大きな原因です。
前述した通り、ほとんどの利用者は自力で起きることができません。そのため1日3回のベットから車椅子への移乗介助、トイレ誘導では車椅子からトイレへの移乗介助、食堂ホールでは車椅子から椅子への移乗介助、入浴では車椅子あるいはストレッチャーから入浴ストレッチャーへの移乗介助と1日に何度利用者を担ぎ上げるのかと思うほど利用者の移乗介助をすることになります。
またオムツ交換では体を前屈させた状態で1回につき10人前後の方を対応することになります。
これを日中3回程度、夜間は1回につき20人前後を3回程度おこないます。ここに書いた回数はあくまでも一般的なもので施設や業務によってはさらに多くの移乗介助とオムツ交換を課せられることもなんら珍しくありません。
このような重労働の仕事ですから、正しい知識、コツを身に付けずに介護業務を行ってしまうと、ヘルパーさんは例外なく腰痛になってしまうのです。
ヘルパーが腰痛にならないために「ボディメカニクス」を活用
1日に何度も腰に負荷をかけることになりますから、ヘルパーが腰痛にならないためのポイントとして、「無理な体勢で仕事をしない」「利用者にとっても介護者にとっても安全安楽な介助を行うこと」が重要になってきます。
この2つを満たすために大切な知識が「ボディメカニクス」の活用です。ボディメカニクスとは人間の運動機能である骨、関節、筋肉等の相互関係の総称で、力学的相互関係を活用した技術のことです。
要するに人間の体のメカニズムを有効かつ効率的に使い利用者にとっても介護者にとっても安全で安楽な介助をするための技法になります。
簡単に説明をするとテコの原理と考えると解り易いと思います。介助をする際に自分の重心を低くして足を広げることで支持基底面席を広くして基盤を安定させます。
次に利用者を持ち上げる際にはなるべく自分に近づけて持つことで小さな力で持ち上げることが可能になります。また対象物である利用者の体を折り曲げて小さくし、ベットとの接地面積を小さくすることで摩擦が減り移動が楽になります。
ボディメカニクスを活用できるようになると、介助をする際にどのポイントに力を加えると最小限の動きで最大の力を発揮できるのかが分かるようになるため、あまり力を必要とせず体にかかる負担が大きく減ります。
ボディメカニクスを習得するまで
ボディメカニクスを理解して使いこなせるようになると身体への負担がかなり減ります。しかしながら、ヘルパーがボディメカニクスを正しく理解して多種多様な利用者に対して使えるようになるまではある程度経験が必要になり、時間がかかります。
実はこのボディメカニクスを正しく理解して習得するまでの間に腰痛を発症することが多いのです。そのため必要な知識と技術を習得するまでの間は注意しなければなりません。
ウエイトトレーニングとコルセットで腰痛予防
前述したとおりボディメカニクスを理解して習得すると腰痛になるリスクがかなり減りますが、習得にはある程度の時間がかかり、その習得するまでの間が一番腰痛になるリスクが高いのです。
そのためこれから介護の仕事を始めるという際にはあらかじめ準備をすることが望ましいといえます。まず腹筋と背筋をバランスよく鍛えることです。
一般的には意識してウエイトトレーニングや定期的にスポーツに取り組んでいる方を除いて、腹筋と背筋のバランスが均衡になっていないことが多いと思います。
手始めには腹筋と背筋を同じ回数行うようにしましょう。続いてコルセットというものがあります。これは介護をする際に腰に巻き付けて腰を保護する目的があり、不足している筋肉の代わりの役目をしてくれます。
ボディメカニクス習得前の期間にこの2つを腰痛予防の準備として行うと効果的です。
最後に
介護の仕事は非常に身体的にも精神的にも重労働の仕事です。ある一人の利用者と介護職員をサンプルとした場合に利用者は年々できないことが多くなり介護を要することが増えて重度化して行く一方で、介護するヘルパーも年々年を取り体が衰えていきます。
去年まではできたという安易な自信が腰痛につながってしまいます。ヘルパーは自分の力を過信せず、無理をしないこと、また毎日酷使する体のケアを怠っても腰痛に繋がってしまいます。
自分の心と体のケアを上手に行うことも腰痛予防には大切なポイントです。